NEW vol.06「視機能発達における新たな試み」今回はゲームの専門家が視機能の発達に関して語ります!
2018年2月21日 ach naviブログ

これまで月齢に応じた目の発達に良いことと、発達しているかの確認に関して、そして、視覚発達の促進期に特にしてはいけないこと、さらに、感受性期の視機能発達をご紹介してきました。
 
まだ、ご覧になっていない方はバックナンバーをご確認ください。
 
 
今回は弱視訓練にゲームという視点を取り入れて、「訓練を楽しいものに変える」試みに成功した株式会社コト 代表取締役社長の窪田和弘氏にインタビューしました。株式会社コトが開発した訓練ソフトは、弱視訓練器オクルパッド®︎に採用されています。このソフト開発を通して、コンピュータ・ゲームがどのように世の中に寄与するか、という一例をご紹介します。
 
 

【弱視訓練ソフトの誕生】

 北里大学の半田先生から、弱視訓練用ソフトの開発を依頼されたのは、2014年の夏のことでした。iPad上で動くミニゲームを8種類。手に持つブロックのようなものを使って iPad画面でゲームをします。我々は、種々のゲームを開発してきた実績がありますが、医療訓練用のソフト開発を手掛けたのは初めてでした。そのような逡巡の中でも、半田先生との議論を通して、

  患児たちが「プレイしてて楽しい!」と思えること

が最も重要であると理解できました。訓練は継続できてこそ意味があります。訓練ソフトといえども通常のゲームソフトと同じ心構えで開発すればよいのです。すべてはここからスタートしました。

 


【楽しさの追求】

 我々は、自社開発したブロックをこのゲームに導入しました。ブロックを使わない場合は、指で画面を触りつづけることになりますが、低年齢の患児にとっては、数か月におよぶゲームプレイは、指に大変な負荷をかけます。ところが手に持ったブロックが画面と直接接触するだけであれば、1日30分程度の訓練も、患児にとっては非常に優しいものになります。また、「このブロックを使った多感覚フィードバック(視覚で捉えたものを手で追従)が訓練の効率を上げるであろう」という半田先生の狙いもありました。この時点で、ゲーム企画の三本柱が決まりました。

  気持ちよさ:操作が快適にできるように、ブロックの反応速度を追求。
  不思議感  :「画面内容がブロックに反応する」ような不思議感の創出。
  達成感    :ゲームクリアによって得られる達成感と報酬の連動。

 達成感は、仮想ガチャ・マシンを導入することで実現しました。ゲームプレイ結果に応じて付与されたコインを、仮想ガチャ・マシンに投入すると、デジタルコンテンツがもらえます。数か月の開発期間を経て、「ブロックを使って楽しさを盛り込む」という、世界初の訓練ソフトが完成しました。

 

こちらが8つのゲームの中のひとつ「さんぱつゲーム」

 

オクルパッド使用時の動画がこちら

 


【医学的観点での留意点】

 各ミニゲームは、原則1週間単位での訓練カリキュラムになっています。固視、左右追従、上下追従、等々、弱視にとっての訓練ハードルを少しずつ上げていけるようなミニゲームの形態に仕立てました。どのミニゲームをいつやるかは、患児がメニューから選択できます。

  固視訓練:羊バリカン、窓ふき、モグラたたき、動物キャッチ
  左右追従:卵運び
  上下追従:リフティング、エイリアン
  報酬付与:仮想ガチャ・マシン

 また、訓練実績(各ゲームの開始時刻とプレイ時間)が自動的に機器に記録され、視能訓練士がその記録を読むことで訓練指導に活かせるようにしました。この弱視訓練器はオクルパッドと名付けられ、北里大学病院をはじめとして、日本全国の様々な病院で運用されています。オクルパッドを使って視力が回復したという便りを聞くと、訓練の持続性が高まった証拠だと感じます。


【偉人の思い】

 今、オクルパッドを目の前にして、四半世紀前に思いを馳せてしまいます。
 二十数年前、任天堂からたくさんのゲーム機器を世に送り出した横井軍平という偉人がいました。ゲームウォッチ、ゲームボーイ、十字キー、等々、今ある電子ゲームの基礎を作った人です。彼は、1996年任天堂を退社し、自分の会社を設立しました。それが株式会社コトです。残念ながら、設立1年後に交通事故で急逝してしまいますが、存命のときに次のようなことを言っていました。

昨日病院に行ったら、足のリハビリをしている子供がいたが、かなり痛そうにやっていた。リハビリ室に東海道五十三次の背景を映し出して歩いていくと風景が変わっていくような装置を置けば、苦しみを緩和できるかもしれない。つまりは、オモシロサが苦しさを楽しさに変える。「今日のリハビリはここまでにしようね。」と周りがストップをかけるくらいに!

それを聞いた私は、「それは理想論であって、実践できるわけがない」と瞬間的に思ってしまいました。ところが、そこから四半世紀を経て、彼の思いは現実のものになりました。彼が作った会社がソフト開発を手掛けて、

  オクルパッドを使用した弱視訓練

を世に送り出したのです。弱視を治す訓練が患児にとって楽しいと思える訓練に変わり、「今日はここまでね!」と視能訓練士の方に言わせるまでになったのです。横井軍平氏は慧眼であったと言わざるをえません。


【ゲームが変える世の中】

 2018年2月、オクルパッドは、「ものづくり日本大賞」を経済産業省から受賞しました。訓練器として世の中に認められたんだなと感無量です。コンピュータ・ゲームは、その功罪が世の中で議論されて久しいのですが、使い方次第では非常に有益なものになります。コンピュータを使った様々な演出が作り出すオモシロサやオドロキが、「苦しみを楽しみに変えるチカラになる」ことでしょう。これを実践する場は、まだ世の中のあちこちに潜んでいます。たくさんの人がそれを発見し、実践していく世になっていくことを願っています。


次回も目の成長に関して、専門家にお話をお聞きします!

 

今回お話を聞いたのは・・・

株式会社コト 

代表取締役社長

窪田和弘さん

 

 

Profile

窪田和弘 Kazuhiro Kubota

1985年大阪大学理学部物理学科卒業。日本電気株式会社を経て、99年に株式会社コト入社。2001年に代表取締役就任し、現在に至る。

 

視機能の発達ブログのバックナンバー

vol.01「目の成長を考える」

vol.02「1歳までの目の成長」

vol.03「1歳までの目の発達状況」

vol.04「視覚発達の促進期に特にしてはいけないこと」

vol.05「感受性期の視機能発達」

 

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